同人エロ漫画は何部売れるのか
2026年10月版EROMANGA HALL OF FAME 研究資料 第2号 ── 初版公開 2026-10。調査日 2026-10-27。このページのURLは恒久的に維持し、内容を改める場合は版表示を進めて明記します。
同人誌を1冊出すと、何部売れるのか。
描き手なら一度は気になり、読み手もときどき想像するこの問いには、実はまともな答えがありません。聞こえてくるのは、何万部も売れたという大当たりの話か、まったく売れなかったという嘆きのどちらかです。そのあいだにいる大多数の作品がどれだけ売れているのかを、公開された形で数えた資料は見当たりません。
そこで、数えてみました。DLsiteで販売中の同人マンガ155,154作の販売数を、1作残らず。
DLsite 同人「マンガ」・有料で1本以上の販売がある作品(155,154作)の累計販売数。2026-10-27時点。
この調査でわかったこと
- 170本同人エロ漫画の「ふつう」は、百数十本。真ん中の作品は170本。1,000本売れれば上位15%、1万本は100作に1作もない。→ 図1・図2
- 8作 → 264作市場の伸びは、上の方にだけ届いた。1万本を超えた作品は、2014年発売の8作から、10年後の2024年発売では264作に。真ん中の作品は185本と182本で、変わっていない。→ 図4
- 71% と 28%続くかどうかは、1作目で分かれる。1作目が1,000本を超えたサークルの71%が5作以上を出した。100本に届かなかったサークルでは28%。続けても1作ごとの数字はほぼ横ばいで、増えていくのは作品の数。→ 図5・図6
ほかにも ── 星(評価)が1件つくと、その向こうに買った人がおよそ4人いる。FANZAの販売を足すと、同じ作品の実際の販売数は多くの場合DLsiteの倍以上になる。
答えから言えば、真ん中の作品の販売数は170本です。全作品を販売数の順に並べたとき、ちょうど真ん中に来る作品がこの数字で、半分の作品はこれより少なく、半分はこれより多く売れています。以下、その中身を図で見ていきます。
図1 ── 100作に縮めてみると
DLsiteの同人マンガ155,154作を100作に縮め、1マス=1作として販売数の帯で色分けしたもの。図の棒や点、マスに触れると数字が出ます。
100作を並べると、39作は100本に届いていません。いちばん多いのは100〜999本の46作で、1,000本を超えるのは15作。1万本を超える作品は、100作のうち1作、全体でも1,501作(0.97%)です。
図2 ── 販売数の分布
横軸は販売数の帯(1つ右へ進むごとにおよそ3倍)、縦軸はその帯に入る作品の割合。
山の頂上は100〜299本の帯です。最も売れた作品は410,901本に達していますが、平均(750本)が中央値の4.4倍にもなるのは、こうした一握りの大ヒットが平均を大きく引き上げているためです。「平均で何部」という言い方が、同人の実感から遠くなる理由がここにあります。
数字の表を見る(分位点)
| 位置 | 販売数 | 読み方 |
|---|---|---|
| 下位10% | 13本 | これ以下が全体の1割 |
| 下位25% | 47本 | これ以下が全体の4分の1 |
| 中央値 | 170本 | ちょうど真ん中 |
| 上位25% | 546本 | これ以上が全体の4分の1 |
| 上位10% | 1,543本 | 10作に1作 |
| 上位5% | 2,909本 | 20作に1作 |
| 上位1% | 9,798本 | 100作に1作 |
| 上位0.1% | 34,081本 | 1,000作に1作 |
図3 ── 売上はどこに集まっているか
全作品の販売数の合計(116,399,881本)を、売れた順に作品を並べて区切ったときの取り分。
上位1%の作品が、全体の販売数の26.8%を占めます。上位10%まで広げると67.2%。反対に、下位半分の作品が分け合っているのは、全体のわずか4.0%です。同人マンガの売上は、ごく一部の作品に強く集まっています。
図4 ── 10年で、何が増えたのか
発売年ごとに見た3つの数字。横軸はそろえてある。販売数は調査日までの累計なので、直近2年(薄い色)はまだ売れている途中で、低く出る。
新作の点数
1万本を超えた作品の数
真ん中の作品の販売数
1万本を超えた作品がいちばん多いのは、2024年に発売された作品です。そこから10年さかのぼった2014年と比べます。新作の点数は3,974作から16,616作へ、約4倍。1,000本を超えた作品は413作から3,098作へ、約8倍。1万本を超えた作品は8作から264作へ、約33倍になりました。ところが真ん中の作品の販売数は185本と182本で、ほとんど変わっていません。
DLsiteの同人マンガの市場は、この10年で大きくなりました。けれども、その伸びは上の方に集まり、真ん中の作品には届いていません。しかもこの比べ方は、2014年の作品のほうが10年長く売られてきた分だけ有利です。それでも差がこれだけ開いている、ということです。2025年以降に出た作品は、発売から日が浅くまだ売れている途中なので、比べる相手にしていません。
補足 ── 古い年の数字について
最も古い2005年の作品は、真ん中の作品の販売数が279本と高めに出ます。販売を終えた作品は調査に入らないので、古い年ほど、いまも売られている「生き残った作品」だけの数字になるためです。
サークルの側から見る ── 続く人と、止まる人
同じ時期(2016〜2019年)に1作目を出したサークル3,330組を、1作目がどれだけ売れたかで分け、その後に5作以上を出したかどうかを数えました。
図5 ── 1作目の販売数と、5作以上を出したサークルの割合
1作目が1,000本を超えたサークルは71%が5作以上を出しています。100本に届かなかったサークルでは28%。最初の手ごたえと、その後も描き続けるかどうかは、はっきり結びついています。逆から言えば、1作目が100本に届かなくても、およそ3割のサークルは5作以上を出しています。
図6 ── 10作以上を出したサークルの、1作目から10作目までの販売数(中央値)
では、続けると1作ごとの数字は伸びていくのか。10作以上を出したサークル(3,733組)の作品を出た順に並べると、1作目の302本から10作目の283本まで、ほぼ横ばいです。続けて増えていくのは、1作ごとの数字ではなく、作品の数です。同じ2016〜2019年に始めたサークルで見ると、販売数の合計は、1作で止めたサークルの58本に対して、10〜29作を出したサークルでは8,094本(いずれも中央値)。差は140倍です。
1作目の販売数には、後の作品から遡って買われた分も含まれます。続いたサークルほど1作目の数字は後から伸びやすく、図5の差の一部はそのためです。直近2年に出た作品は累計が浅いので図6から除いています。
数字の表を見る(作品数で分けたサークル)
| 作品数 | サークル | 作品 | 1作の販売数(中央値) |
|---|---|---|---|
| 1作 | 6,096組 | 6,096作 | 63本 |
| 2〜4作 | 6,162組 | 16,798作 | 111本 |
| 5〜9作 | 3,399組 | 22,220作 | 192本 |
| 10〜29作 | 2,957組 | 48,023作 | 267本 |
| 30〜99作 | 776組 | 36,326作 | 231本 |
| 100作以上 | 100組 | 25,691作 | 39本 |
100作以上を出している販売元には、連載ものを話ごとに分けて大量に配信するレーベルが多く含まれ、ふつうの同人サークルとは性格が違います。図5・図6からは除いています。
| 2016〜2019年に始めたサークル | サークル | 1作目(中央値) | 合計(中央値) |
|---|---|---|---|
| 1作を出した | 828組 | 58本 | 58本 |
| 2〜4作を出した | 937組 | 144本 | 373本 |
| 5〜9作を出した | 659組 | 247本 | 1,685本 |
| 10〜29作を出した | 729組 | 411本 | 8,094本 |
| 30〜99作を出した | 177組 | 381本 | 19,553本 |
図7 ── 値段と販売数
販売価格の帯ごとに、真ん中の作品の販売数。
真ん中の作品が最もよく売れているのは551〜880円の帯(216本)で、安ければ安いほど売れる、という一本調子の関係にはなっていません。
価格は調査日の販売価格で、割引中の作品は割引後の値段で入っています。値段はページ数や作品の性格と結びついているので、この図は「値段を変えれば売れ方が変わる」という意味ではありません。
数字の表を見る(価格帯)
| 販売価格 | 作品 | 中央値 | 上位10%の入口 |
|---|---|---|---|
| 330円以下 | 21,069作 | 87本 | 930本 |
| 331〜550円 | 31,201作 | 144本 | 1,139本 |
| 551〜880円 | 79,409作 | 216本 | 1,760本 |
| 881〜1,320円 | 17,322作 | 183本 | 1,808本 |
| 1,321円以上 | 6,153作 | 136本 | 2,207本 |
図8 ── FANZAでは、もっと売れている
ここまではDLsiteだけの数字です。ところが同人マンガにはもう一つの大きな売り場、FANZAがあります。FANZA同人の「コミック」152,670件も同じように数え、同じ位置の作品どうしを並べました。
横軸は1目盛りで10倍になる。点の位置は、それぞれのストアで作品を販売数の順に並べたときのその位置の作品の販売数。
真ん中の作品ではFANZAが243本と、DLsiteの1.4倍です。差は上へ行くほど開き、上位1%の入口ではFANZAが93,903本と、DLsiteの約10倍に達します。ヒット作の売れ方では、FANZAのほうがはるかに大きな市場です。
数字の表を見る(DLsiteとFANZA)
| 位置 | DLsite | FANZA |
|---|---|---|
| 作品数 | 155,154作 | 138,268作 |
| 下位25% | 47本 | 63本 |
| 真ん中 | 170本 | 243本 |
| 上位25% | 546本 | 960本 |
| 上位10% | 1,543本 | 4,046本 |
| 上位1% | 9,798本 | 93,903本 |
| 最多 | 410,901本 | 465,278本 |
図9 ── 同じ作品の販売のうち、FANZAで売れた割合
両方のストアで同じ作品だと照合できた1,707作で見ると、販売の合計のうちFANZAが占める割合は、真ん中の作品で66.7%でした。FANZAが半分を超える作品は69.7%、9割を超える作品も21.3%あります。こうした作品では、DLsiteの数字だけで「この作品は何本売れた」と言うと、実際の半分以下しか見ていないことが多い、ということになります。
どちらのストアの販売数も、値引き企画の期間に売れた分を含む累計です。照合できた作品は当館の殿堂とその周辺の、よく売れた作品に偏っています。全作品で同じ割合になるとは限りません。FANZAでは販売数を表示していない作品が8.3%(12,659件)あり、図8から除いています。
図10 ── 星(評価)1件の向こうに、何人いるか
DLsiteの作品ページには、販売数と並んで評価(星)の件数が出ています。販売数が100本以上の作品で比べると、真ん中の作品でおよそ4人に1人が星をつけています。
ただし、この割合は売れている作品ほど下がります。100〜999本の作品では星1件あたり約3.4人ですが、10,000本を超える作品では約6.3人です。星の件数しか見えない場面(販売数を伏せた作品など)で売れ行きを見積もるときは、この開きを踏まえる必要があります。
数字の表を見る(評価をつける人の割合)
| 販売数 | 作品 | 評価をつける人の割合(中央値) | 星1件あたりの購入者 |
|---|---|---|---|
| 100〜999本 | 72,114作 | 29.8% | 3.4人 |
| 1,000〜9,999本 | 21,971作 | 23.4% | 4.3人 |
| 10,000本以上 | 1,501作 | 15.8% | 6.3人 |
まとめ
同人エロ漫画の「ふつう」は、170本。
何万部という話は、確かに実在します。けれども1万本を超える作品は100作に1作もない。ごく上の方の話です。1,000本売れれば上位15%に入り、真ん中の作品は170本。多くの作品は、数十本から数百本の読者に届けられています。
そしてこの「ふつう」は、市場が大きくなっても動いていません。2014年からの10年で新作は約4倍に増え、1万本を超える作品は8作から264作になりました。伸びたのは上の方だけで、真ん中は185本と182本で、変わっていません。描き続けるかどうかは最初の手ごたえで大きく分かれ、続けたサークルも1作ごとの数字はほぼ横ばいのまま、作品を積み上げて合計を伸ばしています。
だから、真ん中にいる作品にとって、読者1人の重さは小さくありません。170本の作品にとって、1本の購入は170分の1。星をひとつつければ、それは買った4人分の声として作品ページに残ります。気に入った作品に星をつけることは、思っている以上に大きな1票です。
方法
DLsite: 同人フロアのサイトマップに載る全作品番号を一括照会し、作品形式が「マンガ」の作品を数えた(2026-10-27取得、照会は10秒間隔)。販売数は各作品ページに表示される累計の販売数。有料で、販売数か評価が1件以上ある作品だけを対象とした(177,045作)。このうち翻訳版(21,890作。題名の頭に【◯◯語版】などを付けて別番号で出ているもの)は原作と同じ作品の別版なので除き、残る155,154作を集計した。サークル数は販売元のIDで数えた(19,490組)。サークルの続き方(図5・図6)は、作品を100作以上出している販売元を除いて数えた。
FANZA: 同人の「コミック」の一覧を価格帯で分けて全件を取得した(2026-10-27取得、10秒間隔)。販売数は一覧に表示される累計値。表示の無い作品は非公開として件数だけ数えた。
両ストアの照合: 当館が殿堂の運用のために作成している、同一作品の対応表(題名・サークル・書影の一致で照合)のうち、両ストアに販売数があるもの。
限界
(1) 販売数はストアの公開値で、当館の推定は一切含まない。(2) 販売数が0で評価も無い作品、無料作品、販売を終了した作品は調査に入らないため、下の方の数字は実際より高めに出ている。(3) 累計なので、新しい作品ほど数字が小さく出る。(4) 価格は調査日の販売価格で、割引の影響を受ける。(5) 総集編・セット商品も1作として数えている。(6) FANZAには配信開始日の公開値が一覧に無いため、年ごとの分析とサークルの分析はDLsiteだけで行った。DLsiteで1作だけのサークルが、FANZAなど他のストアで続けている場合もある。(7) 同人マンガのストアはほかにもあり(メロンブックス、とらのあな等)、作品の全販売数はここに示した数字より多い。
このページの引用方法
EROMANGA HALL OF FAME「同人エロ漫画は何部売れるのか」2026年10月版, https://ehof.net/research/doujin-sales/ (参照 YYYY-MM-DD)
URLと版表示は恒久的に維持されます。数値を引用する際は版(2026年10月版)の併記を推奨します。参照日には本日の日付が自動で入ります。
調査: EROMANGA HALL OF FAME(当館データベース)。関連: 研究資料 第1号 成人漫画家の長期活動に関する調査 ・ 同人作品殿堂